職場のストレスとうつ状態のリスクとの関連性について

研究代表者 群馬産業保健推進センター   所長    善如寺 秀

共同研究者 群馬産業保健推進センター   相談員  竹内 一夫

共同研究者 群馬産業保健推進センター   相談員  平原 昭

共同研究者 群馬産業保健推進センター   相談員  佐藤 秀

研究協力者 埼玉医科大学公衆衛生学教室 助手   太田 晶子

研究協力者 テキサス大学健康科学センター助教授  Cathreine R Roberts

うつ病や自殺の要因として注目を浴びている職場のストレスを、米国職業安全保健研究所(NIOSH)の包括的な疫学モデルに基づいて測定し、また、うつ状態をテキサス大学方式の抑うつ評価尺度DSDを用いて測定した。
上記に関する自記式質問紙を、調査協力の得られた従業員数200-2,000名規模の群馬県下の4つの企業(家庭電気機器製造、電気・通信関係、自動車部品製造、造園、土木関係)で実施した。調査対象者980名の内、883名から回答を得た(回収率90.1%)。

女性労働者では標本数が少ないため職種間の検討ができなかったが、男性労働者の職種間では、 1;40才台では管理職において量的負荷(仕事の要求度)によるストレスが高く、50才台では事務職とその他の職種で職場における将来不明確によるストレスが高かった。仕事のコントロール(裁量度)は40才台以上の管理職で高く、それ以外の職種では相対的に低かった。また、全年齢層で専門技術職は役割葛藤(仕事-非仕事葛藤)が高かった。このように、各職種によって問題となるストレッサーの優先順位が異なる可能性が示唆された。 2;管理職では「やりがい」が高い反面、配偶者以外の家族・友人・親戚からのサポートが低かった。残業時間も長いことから、管理職は職場以外の人間関係が希薄である可能性がある。 3;仕事満足は管理職や専門技術職で高く、抑うつ度は管理職がほかと比べて低い傾向にあった。これは、管理職の例で言えば、量的負荷が高く、配偶者以外の家族・友人からの支援を得にくい反面、管理職同士の連帯感や、仕事へのプライドが抑うつ感情そのものを和らげているといった理由が考えられた。

また、DSDでうつ病を疑われた者はそうでない者に比べ、 1;職務上の自身の将来が不明確な度合いが強く、 2;同僚からの支援はむしろ高く、 3;仕事上のコントロール(裁量度)が低く、4;量的負荷(仕事上の多さ、要求度)が高く、 5;最近、別の職場への転職があり、 6;上司からの支援が低いことが、この順に強く影響していた。同僚からの支援や配偶者以外の家族・友人の支援が高いことがうつ状態判定に寄与するといった、一見矛盾した所見も見受けられたが、これはうつ状態と判定されたものが、すでに同僚や友人に相談をした後であったことから生じているためではないかと考えられた。

今後も引き続き、女性労働者を中心により多くのデータを採取することが必要であり、また、事例研究などを含めて調査を広げて、産業現場におけるメンタルヘルス対策マニュアルの資料としたい。