職域メンタルヘルス不全者とその対応 質問紙THIによる事例を中心に

研究代表者所属・職氏名:群馬産業保健推進センター 所長 鈴木庄亮

調査研究期間:平成17年4月~平成18年3月

鈴木 庄亮 群馬産業保健推進センター所長、企画・総括責任
栗原 久   東京福祉大学教授 群馬産業保健推進センター相談員(健康相談担当)
調査の計画・管理・運営
月岡 鬨夫 群馬県医師会理事・診療所長、同センター相談員(産業医学担当)
事例研究
藤田 晴康 KKルネサステクノロジ高崎専属産業医 同センター相談員(産業医学担当)
集団事例とその解析
椎原 康史 群馬大学医学部教授 同センター相談員(メンタルヘルス担当)
事例研究
松澤 一夫・森 弘文 診療所長  同センター相談員(メンタルヘルス担当)
事例研究
浅野 弘明 京都府立医大保健学科助教授、疫学統計
データ解析とTHIシステム改善

研究目的

平成15年度の当調査研究事業で応用開発された質問紙「健康チェック票THI」とそのPC処理システム「THIプラスVer_03版」を用いて、職域の心身の健康管理に応用し、その有用性を検討すること、特にメンタルヘルス不全のリスク群のふるいわけの妥当性を面接等で検討することである。これらの結果をTHI実施の事例集としてまとめ、広くお知らせしたい。

対象と方法

そのため各種事業場、県外の某自動車製造業450人、某鍵会社130人、県内の某精神医療老人介護機関280人、某検診検査機関185人などの従業員合計1000人以上に健康チェック票THIを実施し、結果の図と健康尺度点にもとづく個別アドバイスを親展の封書で本人宛お返しした。
心身に問題のあるリスク群は、①心身の症状や訴えの多い者=多愁訴者=身体ストレス度の大きい者、および②抑うつ度の大きい者、③自由記入欄に心身に気になる事お悩み事の記入のあった者、および④長時間労働をしている者(週60時間以上)、の4通りとして、個人ごとに返事・助言を書いた。
THI実施結果をお返しした後、それに基づいて約400人に1人10分の面接をした。別の185人にはTHI結果がご自身の健康評価と合っていたかどうか、どこが意外であったか、健康アドバイスは約に立ったかをアンケートで尋ねた。メンタル不全リスク者、過重労働者、職場調整の必要のある者など、約50人の事例を集めて事例集をつくった。

結果

①多愁訴者の場合、精神心理的あるいは性格的な原因で、身体の症状や訴えが多くなる場合がある。多愁訴は頻回数受信者でもあり、死亡リスクが40%高く、ICDでは身体表現性障害SD、somatoformdisorderと分類される神経症領域の疾患に分類されるものである。12尺度を多変量解析すると多訴傾向が最大の成分であることが判明、これを総合尺度T1と名づけた。T1が高い人は死亡リスクも大きいことが疫学データから判明した。相談が有効なので勧めた。②うつ尺度得点の大きい者は、すでに通院加療中のものが多かった。若い人に注意が必要。③自由記入欄の記入にはそれぞれ対応した。④長時間労働者(週60時間以上)は、生真面目で仕事を引き受けてしまう場合が多く、これに長い通勤時間が重なると睡眠時間が短縮せざるを得ない。要注意である。⑤その他、高血圧、体重増加、運動不足が目だった。運動は「抗うつ剤」でもある。呼吸器、消化器、目と皮膚などの得点の高い者はそれなりの臓器の問題を抱えていることもわかった。

結論

「健康チェック票THI」は、本人の心身のニーズをかなり的確に表現することが判明した。定期健康診断と併用すれば、メンヘル、ストレス、過重労働、生活主観改善などに有効に利用できるであろう。

平成18年3月
労働者健康安全機構
群馬産業保健推進センター 〒371-0022前橋市千代田町1-7-4-2F
電話:027-233-0026; FAX:027-233-9966

研究代表者 群馬産業保健推進センター 所長 鈴木 庄亮